ログとはプログラム実行中に発生したイベントに関する情報をコンソールやファイルなどに出力したものを指します。適切にログを出力することによりプログラムが正常に実行されたかどうか、どこの処理を行っているのか、どれぐらい処理に時間がかかったのか、といったことを調べることができます。
使い捨ての簡単なスクリプトであればprint関数で問題ないのですが、日々使用するようなものは、トラブルが発生した際に原因究明を行えるよう、きちんとしたフォーマットを定めます。また、ファイルに出力しておくと後から調査に使用することができます。
入門編のlogging 基本的な使い方と内容が重複するため、logging の使用方法が理解できている方はスキップしていただいても問題ありません。
なお、実装例は次ページにて解説します。
ログ出力の基本
Pythonの標準ライブラリにはloggingというログ出力のモジュールが用意されています。設定方法が少し難しいのですが、基本的にはログの設定 → ロガーの生成 → ロガーを使用してログ出力という流れになります。設定方法も色々あるのですが、最初のうちはbasicConfigを使用する方法がわかりやすいかと思いますので紹介します。
まずはサンプルを確認してみましょう。
import logging
 
logging.basicConfig()
logger = logging.getLogger(__name__)
logger.error("エラーが発生しました")
上のコードの解説です。3行目のbasicConfigでログの設定を行えますが、今回はデフォルトなので何も指定していません。4行目でロガー、つまりログを出力する機能をもったオブジェクトを生成しています。ロガーには名前を定義でき、特にこだわりがない場合はモジュール名が格納された__name__を使用しますが、監査や調査等、役割に応じた名称を設定することがあります。
ログの設定
ログはアプリケーションの構成や運用に合わせて様々な設定が必要です。基本的な設定項目について解説していきます。
ログのレベル
ログにはエラー、警告、情報等の重要度ごとに種類がありこの種類をレベルと呼びます。予めレベルごとにロガーのメソッドが用意されています。Pythonのログには代表的なものとして以下のレベルが用意されています。以下は公式ドキュメントからの抜粋となります。
| レベル | 用途 | メソッド | 
|---|---|---|
| DEBUG | おもに問題を診断するときにのみ関心があるような、詳細な情報。 | debug | 
| INFO | 想定された通りのことが起こったことの確認。 | info | 
| WARNING | 想定外のことが起こった、または問題が近く起こりそうである (例えば、’disk space low’) ことの表示。 | warning | 
| ERROR | より重大な問題により、ソフトウェアがある機能を実行できないこと。 | error | 
| CRITICAL | プログラム自体が実行を続けられないことを表す、重大なエラー。 | critical | 
引用:https://docs.python.org/ja/3/howto/logging.html
様々なレベルのログを出力してみましょう。先程のデフォルトの設定ではwarning以上のレベルのログしか出力されませんのでbasicConfigでログのレベルをINFO以上に指定します。
import logging
 
logging.basicConfig(level=logging.INFO)
logger = logging.getLogger(__name__)
logger.debug("調査用ログ")
logger.info("処理を開始します。")
logger.warning("1件の警告があります。")
logger.error("エラーが発生しました。")
以下のようにINFO以上のログが出力されます。一方、DEBUGは出力されていないことが確認できます。
INFO:__main__:処理を開始します。 WARNING:__main__:1件の警告があります。 ERROR:__main__:エラーが発生しました。
フォーマット
実際に運用でログを使用する場合、エラー等が起こった時刻が知りたいですね。また、頻繁にエラーの分析が必要なシステムでは区切り文字を変えたりして可読性をあげたほうがよいかもしれません。さらに、マルチプロセスやマルチスレッドの場合はプロセスIDやスレッドIDを参照する必要が出てくるかもしれません。こういった要求を満たすため、一般的なプログラミング言語ではログのフォーマットを整える機能がついており、Pythonにも当然ログのフォーマットを整える機能があります。basicConfigのformat引数でログのフォーマットを指定します。
import logging
 
logging.basicConfig(format='%(asctime)s - %(name)s - %(levelname)s - %(message)s', level=logging.INFO)
logger = logging.getLogger(__name__)
logger.info("処理を開始します。")
上のコードを実行すると、以下のように出力されます。
2021-10-09 20:54:12,448 - __main__ - INFO - 処理を開始します。
フォーマット文字列の%()sで囲まれた部分で何を出力するかを指定します。asctimeが時間、nameがloggerの名称、(loggerについては後ほど説明します。)levelnameがログレベルの名称、messageがメッセージとなります。その他、以下のものが用意されています。標準ライブラリのlogging/__init__.pyのコメントから抜粋しました。
| %(name)s | logger名 | 
|---|---|
| %(levelno)s | ログレベル番号 | 
| %(levelname)s | ログレベル名 | 
| %(pathname)s | (利用可能であれば)ソースファイルのフルパス | 
| %(filename)s | ソースファイル名 | 
| %(module)s | モジュール名 | 
| %(lineno)d | (利用可能であれば)行番号 | 
| %(funcName)s | 関数、メソッド名 | 
| %(created)f | Time when the LogRecord was created (time.time()return value) | 
| %(asctime)s | ログレコードが作成された時間のテキスト形式 | 
| %(msecs)d | Millisecond portion of the creation time | 
| %(relativeCreated)d | Time in milliseconds when the LogRecord was created, relative to the time the logging module was loaded (typically at application startup time) | 
| %(thread)d | (利用可能であれば)スレッドID | 
| %(threadName)s | (利用可能であれば)スレッド名 | 
| %(process)d | (利用可能であれば)プロセスID | 
| %(message)s | メッセージ | 
ログメッセージへの変数埋め込み
また、変数出力する場合は以下のようにstrのフォーマットを使用することができます。
logger.error('引数の値に%s と %sが指定されました', 'aaaa', 'bbbb')
ハンドラとファイル出力
標準出力やファイル等、指定された箇所にログを出力するものをハンドラと呼びます。ハンドラには様々な種類があるのですが、大抵は以下2つで事足りるかと思います。
- logging.StreamHandler:標準出力に出力する
- logging.FileHandler:ファイルに出力する
ファイルハンドラの生成では引数にファイルパスを指定します。basicConfigのhandlers引数で複数のハンドラをリストで指定することができます。
import logging
 
sth = logging.StreamHandler()
flh = logging.FileHandler('sample.log')
 
logging.basicConfig(format='%(asctime)s - %(name)s - %(levelname)s - %(message)s', level=logging.INFO,
                    handlers=[sth, flh])
logger = logging.getLogger(__name__)
logger.info("処理を開始します。")
なお、一部のPyCharmのバージョンでは不具合によりこのhandlersの記述でUnexpected argument(s)という警告が表示されてしまいます。詳しくは以下のフォーラムを参照してください。
https://youtrack.jetbrains.com/issue/PY-39762
ログの設定とモジュール
モジュールが複数に渡る場合でも、予め一箇所でbasicConfigを設定すると全体に設定が適用されるため、後から他の場所でloggingを使う場合設定は不要です。以下の2つのモジュールmod1.pyとsample.pyを準備して確認してみましょう。
# mod1.py
import logging
 
logger = logging.getLogger(__name__)
 
 
def sample():
    logger.error("エラー発生")
# sample.py import logging import mod1 logging.basicConfig(format='%(asctime)s - %(name)s - %(levelname)s - %(message)s', level=logging.INFO) mod1.sample()
sample.pyからmod1.pyを呼び出します。mod1.pyの方ではbasicConfigの設定を行っていませんが、フォーマットされたログが出力されていることを確認することができます。

 
						

